坂井市の地域づくり - 地域SNSに期待されているもの
昨日、第1回坂井市地域SNS導入検討委員会に参加してきました。
私の住む坂井市では、昨年度、第一次坂井市情報化計画を策定し、その中の基本目標の一つとして「住民とともに育むまちづくり」を掲げています。その具体的施策として「地域SNSの構築」が提示され、地域に特化した情報交換やコミュニティの活性化、まちづくりへの住民参加の促進が期待されています。
そもそもの議論として、お役所が地域SNSをつくる必要があるのか、という疑問があります。地域でコミュニティを作って活性化させるだけであれば、mixi の中にそのようなコミュニティを作ればいいという議論もできそうですが、地域SNSには以下のような効果があるのではないかと漠然と考えています。
若い世代の住民参加を促す新しい情報チャネルになる
地方自治体では、住民の意見を最終的に行政施策に反映させるための最も厳粛な手段として、議会があります。住民の代表を選挙により選出。議員が住民代表として行政の施策を審議する、というプロセスです。ただ、このようなプロセスは時間もかかり、多岐にわたる数多くのニーズにきめ細やかに対応することが現実難しいため、「市長へのおたより」や「パブリックコメント制度」といったカジュアルな手段を提供したり、公民館単位で街づくり協議会などを設立して、住民の意見が直接反映しやすい体制を整えています。その一方で、よく問題点として挙げられるのが、このような場を提供しても、今の20代、30代の参加がほとんどないということ。
「この世代は地域に関心がなく」といった枕詞をつけられることが多いのですが、実際には結婚、出産、子育てと、多忙な上に行政のサポートが本当に必要な年代でもあるのです。地域に関心がないから街づくりの集まりに参加できないのではなく、時間がなかったり、その年代が集まりやすい体制になっていないというのが理由ではないかと思われます。
やはり、子育てに関する市の行政施策(道路や学校といったハード整備も含めた施策)が実際のニーズに合ったものになるためには、子育て世代の意見が必須です。それは子育て施策に限らず、ありとあらゆる分野で言えること。
一方、その年代の多くはパソコンや携帯で情報を盛んに検索し収集しています。このような年代に、SNSという入りやすい行政からの情報チャネルを提供することで、地域づくりに参加しやすくなる体制を整えることができます。
役所と地域住民が同じ目線で議論を交わす場が提供される
お役所では、せっかく意見をもらっても、その回答に時間がかかったり、「公式」回答であるために、あたりさわりのない意見しか出せない時が多々あります。これは業務の特質上仕方のないこと。ただ、それゆえに「人間味がない」と非難されることもあるのですが、現場の担当者の本音はまた違うものであることも多いのです。
地域SNSに行政担当職員も個人という単位で参画して、住民と同じ目線で話ができるようになると、「住民 vs 役所」という構図ではなく、「個人 and 個人」というお付き合いが生まれます。「○○の件、貴重な意見をもらって今検討しているけど、予算的にも難しくてね、、、」なんていうことがカジュアルに意見交換できるようになってくると、住民にも役所の仕組みが見えてきますし、お互いの信頼関係も深まっていくのではないかと思います。市役所の職員だって一住民であることに変わりはないのですから。
希薄になりがちな地域社会の人間関係を密なものに
ソーシャルキャピタルなんていう言葉を聞くようになってきましたが、最近、地域内でのコミュニケーションが減ってきています。近所づきあいが面倒ということで、ついつい疎遠になってしまう町内会も、近年頻発している子供の事件などを見ていると、地域で「おせっかいな」おじさん、おばさんがいなくなってしまったおかげで、子供を見守る「目」がなくなり、その結果、まち全体の安全・安心がなくなってきているような気がしています。
地域SNSにより、希薄になりつつある人間関係が再度力強く結びついていくきっかけになれば、地域全体の力も向上していくのではないかと思っています。線で細く結ばれていた地域コミュニティー内の人間関係が面的に広がり、地域全体を包み込むような関係を築くことができれば理想的です。
地域SNS成功の鍵は? - リアルな人間関係を補完するための場
そもそも、SNSのメリットとして挙げられるのは、実際の人間関係をネットの中に持ち込むという点ではないでしょうか。これまでであれば、ネット社会というのは、実際の社会とは別の存在であることがその特徴であるように捉えられてきました。または、その匿名性が特徴としてとらえられ、現実の世界とは切り離された「IT」という特殊な世界が存在するような見方をされてきたと思います。
一方で、SNSは現実の人とのつながりを大切にする仕組みです。OpenPNEの開発でも有名な手嶋屋のサイトにも書かれているように、SNSとはネット社会にいい意味での「タテマエ」を持ち込んだことが大きな成果だと思います。リアルな人間関係が前提にあって、それを補うための地域SNSという視点があれば、地域SNSだけですべてが解決するなんていう多少歪んだ議論にもならないと思いますし、これまでの、議会、広報、パブコメといった既存の行政の仕組みとも親和性をもった形で運用されていくものと思います。(逆に、そうならないと失敗してしまいます。)
実は、私も平成17年度に福井県立大学大学院で地域経営論という授業の一部を担当させていただいた際、地域SNSの可能性について触れさせていただいたことがあります。当時はまだ地域SNSという言葉もそれほどメジャーではなく、千代田区や長岡市が始めたという情報がちらほらと聞こえ始めたころでもありました。自分自身も、当時はここまで地域SNSという考え方が広まるとは思っていなかったので、最近の地域SNSの活動や広がりには驚いています。
また、昨年度は業務で使う組織内SNSということで、行政内部にSNSとWikiを立ち上げて、「新しいコミュニケーションツール」としての活用を提案してみました。これまでのIT導入と違い、リアルな関係や業務が先にあってこそのSNSであるからこそ、非常に使えるツールになっていくのだと実感しています。
いずれにせよ、坂井市がそのような視点を見据えて地域SNSを検討しているということが、そこに住む住民としては非常にうれしくもあり、ありがたいことだと思います。将来的にはその運用も地域(たとえばNPOなど)に、という考えもあるようで、「地域のことは地域で」という「住民自治」の考え方をしっかり見据えている点が、これからの坂井市に期待できる点として感じました。
自分がどれくらいお役に立てるかわかりませんが、この1年、検討委員として積極的に参加できればと思っています。また、SNSについては別にサイトをまとめることを考えていますので、そこでも情報をご提供できたらと思います。
始まりましたね。坂井市地域SNS検討委員会。
私も坂井市民として、この動きを興味深くチェックしてゆきたいと思います。
「行政のお手並み拝見!」(^-^)v
私たちの代表として、市民の思いを委員会に発信してくださいね。期待してます!!
コメントありがとうございます。住民自治をどれだけ本気でやっていくのか、本当に「行政のお手並み拝見!」ということになっていくと思います。また、SNSについてはいろいろと書いていこうと思います。
大変良い企画が出来て今後snsに、期待します。
私は70歳代の農家男性です公開中のブログやコミュニティを
閲覧つると横文字が沢山でてきて、もっと解りやすい言葉おねがいします。
ありがとうございます。
確かに、新しい分野なので、言葉がまだ普及していないかもしれません。特に情報技術関連の分野ではカタカナ用語が多数出てきます。技術用語なので仕方ない部分もある一方で、わかりやすい言葉を使っていかなければいけないのも痛感しています。
アドバイスありがとうございます!