オンデマンド授業動画は「秘伝のタレ」でうまくなる! – 継続的なFDの可能性

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コロナ禍も3年目で、自分の勤務校でもそのほとんどが対面授業(面接授業)となっています。

 

一方で、全てが対面かといえば、そうでもなく、意図的にあえてオンライン授業を残しています。例えば、私の所属する学科・専攻では、週に1日はオンライン授業の日になっています。

 

その理由はいろいろとありますが、このような授業カリキュラムが普段から組み込まれていることは、ノウハウが途切れない、そして、学生・教員双方のスキルにもなります。また、今回のような同様の感染症のパンデミックが起きた場合、慌てなくても普段行っている一部を全体に拡大すればOK、特に、積雪で過去に長期間休講になった経験のある福井などでは、そういう時でも遠隔授業が普段から組み込まれているというのは、「授業機会」そして「質」を担保するという意味でも重要だと思うのです。

 

また、オンラインというとZoomのようなリアルタイム通信する同期型の授業を思い浮かべる方が多いのが圧倒的ですが、実際に学生の評判がよく、教える側としても授業設計しやすいのはオンデマンド型といわれるビデオ収録型の授業。

一方的にビデオだけを見ていると思われがちですが、大学ではLMSLearning Management System: 学習管理システム)と組み合わせて、課題の提出、資料提供など全体としてうまく授業デザインできているので、もちろん授業の種類にもよりますが、講義型の授業であればオンデマンド型(非同期・ビデオ配信型)の授業の方が質の高い教育環境を提供できる場合が多いです。

 

学生からの評判がいいのも、実はオンデマンド型です。

ニュースや新聞などのマスコミをとおして入ってくる情報とかなり乖離があると感じていますが、リアルタイムだと「やってもらってる感」があるから、そして、テレビ映えするからなのでしょうね。オンデマンド・ビデオ授業は、どうしても、「ビデオだけを見せられてて可哀そう…」という絵を作りやすくもあります。

 

と、かなり前置きが長くなりましたが、私はこの3年、勤務校の大学でオンデマンド授業を中心に担当しています。

 

そこで、授業動画作成、というより、オンラインを活用したトータルなオンライン授業設計というべきなのだと思いますが、その授業も3年目になりました。

 

実際に授業を作っていて思うのは、「手前みそ」ですが、年々授業の質が向上していると感じています。(あくまで、自分の中での比較)

 

その「質」とはなにか?という点はもちろん様々な議論があると思いますが、たとえば、わかりにくかった説明の仕方を前年の動画や残っている資料を基に改善して、より伝わりやすく、スライド等も見やすく視認性高く、、、という具合です。

 

教員が自然に振り返りができるのがオンデマンド授業

やっていて一番感じるのは、撮影した動画を何度も自分自身で見直すので、客観的視点から自分の授業を振り返ることができる点です。(動画作成は、もちろんPowerPointでかんたん!に)

 

それ以上に学びになるのは、2年目、3年目になって、以前の授業での解説やしゃべりが全て残っているので、そことの比較もできる点。これは自分自身、かなりプレッシャーになります。去年の方が上手に話しているな、、、とか、今年制度が変わったところを去年のように上手に説明できるかな、、、とか。

 

これが、教室内での講義であれば、一過性の授業として終わってしまい、講義している自分自身を振り返ること等なかったと思うのです。学生には「振り返りが大事だ」「リフレクションだ」と偉そうに言いながら、自分自身が大して振り返っていたなったことを、動画作成をとおして気づかされました。この2年間、そして、3年目への取り組みと気づきは大きいと思いました。

 

継続的な授業改善は、老舗の秘伝のタレ

よく、経験と勘と度胸、いわゆる「KKD」なんて言われることもあった職人スキルですが、実際は適当にやっているものではなく、連続的で確かな経験に裏打ちされた勘という名の理論、そして、度胸という名の「自信」や「誇り」みたいなものが職人スキルなのだと思いました。

 

そういう意味で、こうやって積み重ねられる教材は伝統あるお店の「秘伝のタレ」のように、継続的に授業スキルがつぎ足されて完成されていくと思うのです。さきほど、「手前みそ」と書きましたが、手前みそ(自家製みそ)のように、先生ごとに深い味わいある授業になれば、、、と思います。

 

最低限の教育の質は等しく担保される必要はありますが、そこから先は、先生方の職人スキルとして秘伝のタレを継ぎ足す、そんなことが見える化されるのが、このオンデマンド型の最大の利点なのではないかと思い始めました。

 

現在、勤務校でFD委員をしていますが、継続的な授業改善の取り組みの中に、このような考え方を活かすことができないか?今年は、こういう部分をもう少し試行錯誤してみたくなりました。

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