社会学の分野では、人にアンケート等を行い調査をするというのが一般的だと思うのですが、人が社会的にどのような行動パターンをとるかを簡単に調査する方法が生まれつつあります。しかも、本人が意識することなしに。これはある意味怖いことでもあるのですが、現実のものとなりそうです。
携帯電話が個人を特定するGPSに
イギリスの科学雑誌「ネイチャー」に掲載された記事によると、ノースイースタン大学のMarta C. González、César A. Hidalgo、Albert-László Barabásiら3人の研究者が、10万台の携帯電話所有者の位置情報を解析することで、人の社会生活における行動パターンを分析したとのこと。
その調査では、それぞれが誰かは「anonymized mobile phone users」と書かれていたので、匿名でということになるのでしょうが、よく考えると、常にアンテナと通信を行っている携帯電話は自分の位置情報が自分自身で分かるだけでなく、電話会社からも、どの携帯電話がいつどのあたりにいるのかということが分かってしまうことになります。つまり、そのような調査目的にわざわざ調べなくても、常に電話会社のシステムログには日本人数千万人分の行動記録が残されているということに。
これは、冷静に考えると恐ろしいことで、近未来の映画でしか実現していなかったようなバーチャルな世界が実はすでに存在しかかっていることを示している気がします。
これまでアンケート調査等でしか知り得なかった社会学的な統計データなどを安価に、しかも正確に出すことも可能になりますが、一方で悪用されたときの被害は取り返しがつかないほど甚大になることは間違いないでしょう。
住基ネットと携帯電話の微妙な関係
データベースに詳しい方ならピンと来るかもしれませんが、データベースには個々のデータを一意(ユニーク)なものにするためのID番号が必要になります。それを全国規模でやろうとしたのが住民基本台帳ネットワーク、いわゆる「住基ネット」です。
持つだけでプライバシーが侵害されているかのような扱いをされてきた住基ネットですが、その一方で、知らない間に自分の行動パターンまで知られてしまう携帯電話は毎月何千円の基本料金を払ってでも皆欲しがります。この携帯電話にも「電話番号」という個人を一意に特定するID番号が付いているのですが、そのように意識している人は少ないのでしょうね。
まさに"Enemy of America"が現実になりそうな話ですね。
「オサイフケータイ」の営業担当者は「実はこれって、本当に何でもできる危ないシステムなんですョ~」って、ポロッと本音を漏らしていました。
経済最優先主義に走ってしまうと、本当に怖い未来が待っていそうです。
これでどのようなことまでできるのかということをしっかりと見極めた上で(本人が納得したうえで)、使っていかないといけないのでしょうね。
そういう意味では情報公開というのは大事なんだと感じました。