アメリカに来てわかった日本の高品質が世界で負けてしまう理由

アメリカのレストラン

アメリカのレストラン

先週までアメリカ合衆国デンバー(コロラド州)にいました。ELI2013というカンファレンスで発表のために滞在していたのですが、アメリカに来るたび思うのは、「サービス」とは買う物であるということ。

 

例えば、代表的なものはレストランで食事をしたときのチップ。こちらにきて日本人が最初に戸惑うものの代表であるチップの習慣ですが、私も最初はなぜこんな面倒なものがあるのか、と疑問に思っていました。

 

しかし、10年ほど前に、しばらくアメリカで暮らしてみて、その合理性がなんとなく理解できました。そして話が大分飛躍しますが、なぜ高品質の日本の製品が最近世界で通用しないのか、ということを再認識しています。

 

チップは質の良いサービスを受けた時の対価

アメリカでチップを払うのはどういうときか。一番面食らうのはレストランでの食事です。日本であれば食事が終わり伝票をもらうと、その金額を払うのが当たり前。3000円と書かれていれば3000円払えばそれで支払が終了します。

 

一方、アメリカでは、3000円と書かれていたら、そこから15%~20%程度のチップを払うのが一般的。仮に15%のチップを払うとすると3000円の食事は総額で3500円程度支払うことに。払い方は、現金であれば、キリのいい数字にしてまとめてテーブルで精算というパターンが一般的。「キリのいい数字」と書いたのは、たとえば先ほどの3000円の場合、15%だからといって3450円とかにするのではなく、3500円と端数を切り上げてキリよく支払うということです。

 

IMG_6297クレジットカードであれば、伝票を持ってきてくれるので、そこにクレジットカードをはさんでウエイターに返します。そうすると、クレジットカードをサインするための伝票を再度持ってきてくれます。食事の合計額の下に、チップと総計を書くところがあるので、そこに自分でチップと合計を書き込んで、サインをしてその紙をテーブルに置いてくる、というのが一般的な会計の仕方になります。

 

タクシーなどでも同様で、運賃にチップを上乗して支払います。タクシーは割とローカルルールがあるのでちょっと難しいのですが、基本はレストランと同じ。

 

ホテルでベッドメーキングをしてもらった時に枕元に1ドルを、というのもよく知られていますし、カバンを持ってもらったり、なにか特別なサービスをしてもらった時にもチップを払うというのがある意味常識になっています。

 

日本では質の良いサービスは当たり前

ファストフードはチップなし

ファストフードはチップなし

一方、日本ではどうでしょうか?日本では、サービスというと「無料」という意味があるくらい、質の高い施しは「あたりまえ」という認識。

 

どんなに安いファストフードのチェーン店で食事をしても、店員のあいさつや対応の良さ、店の綺麗さなど全てを完璧に求めます。お店をやっている側からすると、それは顧客獲得のための大事なプロセスであり、他店のと差別化にもつながります。

 

ところが、最近、こういう質の高いサービスは日本が誇るものでもある一方で、国際競争力を低下させているのもこういう質の高いサービスではないか?と考えるようになりました。

 

お店はお役所とちがって民間企業。営利を出していかなければいけません。お金に見合った・・・という言葉もあるように、100円の品物に高級レストランで出てくるようなサービスは釣り合わないし、不要でもあります。でも、日本では「あたりまえ」に求められてしまいます。

 

ここに日本でサービスをすることのジレンマがあったりするわけです。

 

サービスというのはほぼ100%人件費であることが多いと思うのですが、この人件費というのが見えないだけに、意外に高いもの。そして、その質を上げていくためにはかなりの時間と教育に対するノウハウが必要になります。

 

繰り返しになりますが、日本ではマックで100円のコーヒーを売るサービスも、高級カフェで800円のコーヒーを売る場合も同じレベルでのサービスの質を求められます。これは低価格で展開しているサービスであるほど負担になります。
アメリカでは食事以外のサービスは「チップ」という対価で支払います。サービスが悪ければチップを払いません。給仕サービスが全くないファストフードレストランではハイクオリティーなサービスがなくて当然、ということになるわけです。

 

チップがある国では、こうやってサービスの質の差がある意味「可視化」されているわけで、サービス提供をする側、受ける側もそういう割り切りがあります。日本ではこれが見えなくなっているので、受け取る側もどこまでがプラスアルファなのかが見えにくいということになります(逆に、それが日本の良さであり、真心とかおもてなしの精神だという意見もありますが、この件はまた後日。)。

 

国内の需要が飽和状態になってくるとサービス合戦になり、身を削る企業も多いと思いますし、海外進出する場合にも日本式のサービスを展開していくと、最初はそのサービスや質の高さで多くのお客さんが来てくれますが、逆に、競争していく中で、大きな負担になっていくのも間違いありません。
(従業員にも高いサービスを求めるということは、高い給料を支払うということも意味します。)

 

この折り合いをつけるのが難しいですが、アメリカなどはチップという形で「見える化」されて切り離されているだけに、消費者側もそれを適正に評価する目を持ちますし、企業の負担も減っていきます。

 

ここを克服していかないと、日本企業が海外に出て行ったときに、海外の安いサービスや製品に負けてしまうわけです。

 

安かろう悪かろうのすすめ?- わかりやすい例はLCC

今後、日本がどうやってこの問題を解決していくのか。LCCにそのヒントがあるような気がしています。LCCとはLow Cost Carrier。低価格で運行している航空会社です。

 

飛行機のサービスを思い起こしてみると、高い料金ということもありますが、アテンダントさんの対応やシートでのアミューズメント、豪華な機内食に飲み放題に近いドリンクサービスなど、いろんなものが無料でサービスとして提供されています。

 

一方、海外では、こんなサービスはいらないからとにかく安くして!ということ、また、航空会社の競争による体力低下などから、機内サービスを減らしたり、有料化に踏み切るところも増えてきました。

 

その究極がLCCです。手荷物預かりからシートの事前指定まで電車のように有料です。でも安くてOKという人たちがいて、利用が伸びてきていることろみると、日本もこのグローバル化の波に乗りかかっているようにも見えます。

 

日本が今後どうやってサービス展開していくのか、非常に興味があるところですね。

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