金曜日の夕方のニュース2局(FBC福井放送、福井テレビ)でも大きく報道していただけましたが、私の研究室と足羽神社が連携して、非接触型おみくじの仕組みづくりに取り組んでいました。そのリリースが9月10日金曜日にありました。
(FBC福井放送のニュースアーカイブ動画は公式ページからご覧いただけます。)
事前にプレスリリースを行ったので、当日は多くの報道の方々に来ていただき、記者会見会場のようになってしまいましたが、反響の大きさに驚きました。9月11日付の福井新聞(クリックでWeb版の記事全文に飛べます)や中日新聞(クリックでWeb版の記事に飛べます)でも報道していただき、読売新聞、福井ケーブルテレビなどの取材もありましたが、おみくじというシンプルな仕組みにこれほど注目が集まるのは、おみくじが我々の生活の中に意外にも浸透している表れなのだと思いました。
神社の困った!を解決したい
そもそも、なぜこのプロジェクトが始まったかというと、神社でのおみくじ(おみくじの筒をガラガラとならして棒を引くタイプ)は不特定多数が触れるものであり、このコロナ禍で感染対策としてどうか、という参拝者の声があったそうなのです。もちろん、社務所や境内のいたるところに消毒液なども置かれ、感染対策はされていますが、このご時世、他人が触ったものに触れたくないという意見もあり、一時期はこの棒タイプのおみくじは実施を見合わせていたそうなのです。
一方で、このタイプのおみくじが好きだという方もいて、それらニーズ(神社でニーズという言葉を使っていいのかわかりませんが)に対応するために、なんとかならないか、という相談からスタートしました。
シンプルな仕組みと運用の簡易さ
実際、スマホを使ってQRコードでというのはすぐに思いつくアイディア。また、プログラムすることも初心者レベルの知識で十分可能です。ですが、このようなシステムというのは現場での運用があってのもの。
スマホの操作が得意ではない利用者もいます。また、神社側の対応などもしっかりとルール・手順として考えて周知しておく必要がありますし、あまりにも複雑な仕組みだと利用してもらえません(参拝者、神社側双方)。とにかく、簡単で誰でも使えて、かつ、実行が容易なものというのが必須条件です。メンテナンスも不要ということも必須です。
こういうことを、丁寧に神社の方にヒアリングし、現場も見せていただき、授業の合間を縫って、学生と話し合いながら進めてきました。そして、最終的なウェブアプリのプログラムは学生が書き上げました!
あえてシンプルにした紆余曲折
どのような紆余曲折があったかを少し書くと、例えば、最初は1つのスマホで何度もひくことが出来ないように、1日1回だけという設定にして、一度ひいたら、1日は同じおみくじしか出てこない工夫などもしました。ですが、家族で参拝されておみくじを引く場合、家族全員がスマホを持っていない場合もあります。そうすると、ひとりが複数人分のおみくじをかわりに引く必要がありますが、先ほどの制限を付けてしまうと、そういうニーズに対応できなくなります。そこで、あえて、単純明快に制限を外して、何度でもひける仕組みにしてみました。
専用アプリとしての開発も考えましたが、AndroidでもiPhoneでもアプリを入れることをためらう人もいますし、おみくじを引く直前に1回だけのためにアプリを入れるのか?また、アプリがうまく入らなかった場合のトラブルなど、それが利用のハードルにもなるので、特定アプリを使うこともやめました。
支払いについても、非接触ということで、バーコード決済の導入をもちろん検討しましたが、なんと、現時点で、宗教法人は契約ができなくなってます。始まったころはお賽銭もQRコードで!なんていうニュースが流れていませんでした??おそらく、宗教法人ならではの税金上の問題とか、その他いろんな問題があって、現在はストップになっていると推測しますが、そうすると、決済も別の方法を考えなければいけません。
また、ネット上だけで完結する仕組みも最終的に考え中(というか、実はほぼ出来てはいますが・・・)ですが、神社側の想いとしては、やはり、感染対策をしっかりして、神社に、そして足羽山という場に来て欲しいという思いがあります。足羽山一体は、福井市の中心市街地にポツンと飛び出た丘のような山で、のんびりと散策するには非常にいい場所ですし、神社以外の名所、カフェなども点在しているので、地域活性化という意味でも、参拝がてら足羽山に足を運んでほしいという思いが伝わってきました。
そんないろいろがあって、あえてシンプルに単純なプログラムと仕組みに。そして、神社側、利用者側双方が気楽に使える仕組みにということで、今回の形になりました。
複雑で高度な仕組みだけがDXではない
システムやプログラムに長けた方から見たら、「こんな単純で簡単な仕組みなのに?いまさら?」って思われるかもしれませんが、それを継続して運用することにシステムは価値があると思うのです。
最近、DXという言葉をよく聞きます。デジタルトランスフォーメーション(前も教育DXの記事を書きましたが…)。
ですが、20年ほど前からe-Japan戦略を掲げて、業務や生活全体のIT化をやってきていませんでした??
サラリーマン時代は、それなりの規模の組織のITシステム部門でシステム導入等をやっていたこともあるので、複雑な仕組みも数多く見てきました。ただ、今までのやり方を変えずに、無理やり電子化してかえって使いにくくなった仕組みやメンテナンスコストばかりが膨れ上がるも物、そのうち誰も使わないシステムに多額の費用を払い続ける、、、なんていう例も多く見てきました。
その後、独立してコンサルタントになってからは、地域の中小企業等でシステムの運用やメンテナンスが継続的にできない現場も多々見ています。
ICT = Information and Convenience Technology!!
コンピュータシステムは業務を軽減し便利に・楽にしてくれるもの。複雑になり、難しい!と思うのでは変わっていかないと思うのです。今、あらためてDXという言葉がでてくる意味はそこにあるのかと思いました。今度こそは便利で楽になるためのICT。
そういう思いを込めてかどうかはわかりませんが、神社の方々と楽しく取り組ませていただいているプロジェクトとなりました。一番の驚きは、神社という由緒正しくお堅いイメージの場所が、「あ、それいいね!」と抵抗なくこのような仕組みを受け入れて、やってみよう!というフットワークの軽さ!
神道が日本に根付いているのはそういう臨機応変さに理由があるのかもしれません。神社ってすごい!
おみくじシステムは、棒と筒で引いていた時と同様になっていますが、当然プログラムで出しているので、結果的になにがどれくらいの確率で出てくるのか統計を取ることもできます。が、そこがどうなっているかは、神様のみ知るということで、神秘のベールに包んだままにしておきます。
ぜひ、足羽神社、足羽山へ!