現在、いつくかの大学・大学院で非常勤として講義を担当しています。
もちろん、自分では授業デザインをしっかりと考え、授業そのものの組み立てに細心の注意を払ってすすめているつもりですが、いざ学生の立場に自分を置き換えてみると、どうでしょう?
自分の記憶を思い返しても、学生時代、大学の授業を楽しんで聞いてたかと問われると、「NO」と答えざるを得ません。大学時代は授業に出席して十分に取り組んできた真面目な学生ではなかった、というのが正直なところ。
今の学生も、授業つまんない、、、って思っている人たちが多いのではないか?
大学は高校までと違い自分で学ぶ場所。
これを繰り返し聞かされ、立場が変わり、いま大学で教鞭をとるようになってからは学生に幾度となく伝えてきました。
しかし、何らかのきっかけがないと難しいですよね。
そこで、とある講義で、私が一方的に教えるのではなく、「学生でチームを編成して、学生自身が教員になり、他の学生に教える」というようにしてみました(全授業ではなく、5回だけ。もちろん内容に不備があればサポートに入っています。)。
先週はその3回目(3チーム目)だったのですが、学生の授業への食いつきや集中力は驚くことに、私の講義よりも格段にアップしていました。
客観的に何をもって集中力が高く、食いつきがいいのか、というのはデータとして取っているわけではないのですが、そういう手ごたえというのは実際にその場に立つと体感します。
もともとコミュニケーション・企画的なことを学んでいる学生たちなので、授業の視点が「楽しませる」「ひきつける」というところにあるような気がしました。
学生自ら授業をすることの2つのメリット
こうやって自分たちの授業を自分たちで交代で教員役をして実施するメリットは主に2つあると考えています。
1.教える側を体験することで、その分野に対する深い知識や考察が必要となり、学習が深まる。
他人に教えるためには単純にその分野に対する知識が豊富でなくてはいけません。またそれらを効果的に伝えるために、単なる知識の詰め込みではなく、知識を体系化しなければいけないことを学びます。こういうことを繰り返すことで、「受け身な状態」では得られることがない主体的な学びが可能になります。
2.内発的な動機付けに基づいた学びの環境が出来上がっている。
教える、つまり、自分で決めたことを自分で実施するというプロセスを踏むことで、内発的動機付けが生じる環境が生まれ、やる気という点でも非常に効果が高いと推測されます。先ほども書きましたが、これらは、実際に客観的な指標をとって検証しているわけではないので、本当にモチベーションがアップしているのかということを断言はできません。自分自身も不勉強なので、どういう指標をとるとモチベーションが上がったといえるのか、学習効果が高かったといえるのかは難しいところですが。。。
卒業しても学ぶことは続く
普段、企業や商工会議所、公的機関などで講演・セミナーに呼んでいただくケースがあるのですが、そういう場合は、すでに参加者のモチベーションが高い状態であり、参加者を話に引き込むという点では講師は楽ができますし、あたかも自分の実力でみんなが話に集中してくれているような錯覚を覚えます。
一方、学校という空間はある意味、好きでもないのに教室にすわって教員のいうことを聞いて勉強しなければいけない状態。昔は勉強したい人だけが大学に行く時代でしたが、今は行こうと思えば全員が大学に行ける時代になっています。実際、学歴が必要だから、、、ということで多くの大学生がなんとなく進学してきた、というのが実際ではないかと思うわけです。
こういう環境で、学習者のモチベーションを上げるためにはどうすればいいのか、そういう研究を今後進めていきたいと考えています。これは学習者だけでなく、会社などのマネジメントにも通じる話。高校・大学を卒業したら学ぶことは終わり、というのが大多数の認識だと思いますが、「学習」は学校という一部の空間だけで起きているのではなく、我々の生活そのもの全体なんだということを学生に理解し、実践してもらえたら講義の意味もあるのかと、、、そんなことを考えてみました。