埋没費用(またはサンクコスト - sunk cost)とは、あることに投資をした結果、回収不能となった費用のことを言います。
身近な例としてよく挙げられるのは返金できないコンサートのチケット。「やっぱりコンサートに行かない」と決めても、返金不能であるため資金回収できません。このように、どのような判断をしても回収できない費用のことを埋没費用といいます。
経営学の世界では、この埋没費用は意思決定の判断基準にしてはいけない、というのが常識となっています。埋没費用のことはすっかり忘れなさいということですよね。回収できないとわかっているコストなら、その回収に時間をかけるのは無駄というわけです。
埋没費用の誤謬 - Sunk Cost Fallacy
もったいない・・・と思うのが人間の常
この埋没費用について「埋没費用の誤謬(ごびゅう) - Sunk Cost Fallacy」というよく知られた問題があります。例えば、先ほどのコンサートチケットの例なら、行くことに価値がないとわかっていながら、「チケット代が無駄になるから行かないと・・・」と思って行ってしまうこともあるはず。
実際、コンサートそのものに価値がなく、すでに埋没費用になってしまっている以上、コンサートに行くことそのものも時間の無駄なのですが、せっかく支払ったから・・・と費用回収を試みてしまうのが人間の性(さが)。しかし、冷静に考えると、機会費用的にもコンサートに行ってはダメなのです。そのコンサートに行ったところで、自分のもとめている価値を回収することは不可能なのですから。
自治体の事業継続審査にも埋没費用の考え方を!
埋没費用の誤謬の例として、解説書などでは様々な事例が挙げられていますが、私が真っ先に思い浮かんだのは自治体の公共事業。
国や自治体の事業というのは基本的に「ミス」はないというのが前提になっていますので、一度資本投下した事業から撤退するというのはよほどのことでもない限りあり得ません(最近はそうでもなくなってきましたが)。
「今ここで止めたら、どれだけの税金が無駄になると思う!」という決め台詞を掲げて事業の見直しをすることなく何十年もの間継続してきた公共事業ですが、行政経営という言葉が飛び交う昨今、埋没費用を切り捨てる勇気も必要な時期に来ているような気がします。