SWOT分析

SWOT分析とは

SWOT(スウォット)とは経営戦略立案などで利用する現状分析手法の一つです。その内容は非常に単純で一見分析というようにみえないかもしれませんが、実は一番使える手法だったりします。

組織の内部要因としての強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、外的要因としての機会(Opportunities)、脅威(Threats)という4つの視点で評価します。

SWOT Matrix

上記のようなマトリクスをつくり、事業を行っていく上で自組織にはどのような強みがあるのか、弱みがあるのかを書き出していきます。ここには、自社がコントロールできるという意味で内部環境としての強み、弱みを落とし込んでいくことになります。

一方、自分の組織でコントロールできない外的要因を機会、脅威としてマトリクスの下部に落とし込みます。そうすることで、自分達の置かれた環境と、そこに何があり、何が足りないのかということが漠然と見えてきます。といってもこれだけでは何のことかわからないと思うので、実際の事例に当てはめて考えてみたいとおもいます。

実践 - 田舎の温泉旅館の事例

演習:次の一手をどう打つ!?
県内屈指の温泉郷にある老舗旅館「鯖乃家」の経営戦略

「鯖乃家」は県内でも屈指の温泉郷にある老舗の大規模旅館です。バブル全盛期は社員旅行や会社の忘新年会で多くのお客が訪れ、業績は右肩上がりの状態でした。バブル崩壊後、その地方の景気は回復基調にはありますが、なぜか会社からの利用はもどらず、一方で個人旅行が増え、全体としてお客は年々減少してきています。大手代理店等との提携で以前同様に団体のお客も定期的に入ってきますが、その数は徐々に減っています。一方、お客からの要望で増えてきたのが個室への露天風呂の設置や食事の多様化など、今までの団体旅行メインの営業ではありえなかったサービスの改善です。

また、最近、県外大手企業の資本が入ったホテルチェーンが近所の旅館を買い取り、新しいスタイルの温泉ホテルとして売り上げを伸ばしているとの噂も聞こえてきます。その旅館では、夕食などはお座敷でお膳ではなく、バイキングスタイルでいつでも何でも同一料金の低価格サービスを売りにし、予約もインターネットで受け付けることで、新規のお客だけでなくリピーターを確保しているとのことです。

国内旅行需要が冷え込む中、人々の生活や嗜好は多様化し、レジャーといえば温泉だけではなくなってきました。また、海外旅行の価格低下により、国内よりは海外へという流れもとめることは出来なさそうです。そのような中、新聞等の報道で日本政府がビジットジャパンなる計画を打ち上げ、日本への外国人旅行者の倍増計画を立てていることをしりました。

マトリクスへの書き出し

私が思いつきで10分ほどで考えた事例なので無理はありますが、これを使ってSWOTを考えたいと思います。

強み(Strengths)

この旅館の強みは何をあげることができるでしょうか?ここに書き出すのは内部要因であり、自分でコントロールできることに限られます。

  • 県内でも屈指の温泉郷にあるというロケーションの良さ
  • 老舗の大規模旅館であること
  • 大手代理店等のと提携関係があり、定期的な顧客の確保が図れていること
  • 社員旅行や忘年会、新年会に強いこと

弱み(Weaknessees)

弱みは何をあげることができますか?ここに書き出すのは同じく内部要因です。自分でコントロールできること、つまり、できるけどやっていないことです。

  • 個人旅行客が少ないこと
  • 個室に露天風呂がないこと
  • 個人客の多用な食事の好みに対応できていないこと
  • インターネット予約やホームページ等の顧客獲得チャネルがないこと

機会(Opportunities)

機会は外的環境に依存することです。自組織ではコントロールできない環境の変化ですね。

  • 個人旅行者の増加
  • 政府のビジットジャパン計画による外国人旅行者の増加

脅威(Threats)

最後に脅威です。機会と同じく自分達ではコントロールできない環境の変化です。

  • 大手企業資本の参入による新スタイルホテルの存在
  • 国内旅行需要の冷え込みとレジャーの多様化
  • 海外旅行の低価格化

強みや弱みを分析する

以上のように書き出すと、自分の組織(今の場合は旅館)が置かれた状況が大雑把ですが見えてきます。要するに、ケースを単純に分解して分類しただけなのですが、自分達のポジションという意味では非常によく整理できたはずです。

これを元に、強みを更に強くするために、何をどうすればいいのか。弱みをどうすることで強みに変えていけるのか。外的環境の機会をどのように活用して強みにしていくか、脅威に対応するためにはどのような策をとるべきか、という戦略を立てるためのスタート地点を見つけることが可能です。

ケースの例で言うなら、旅館の競合相手はこれまでは他地方の温泉地だったわけですが、現在では価値観が多様化し、アウトドア等のレジャー等も競合相手となってきます。また、個人旅行者は団体とちがいサービスへの評価はシビアですし、嗜好も微妙です。多様化するニーズに対応するために個室に露天風呂を設置し、バイキングスタイルの料理を提供するということも、これら脅威に対応するために必要かもしれません。また、脅威対応だけでなく、外国人の増加ということからも、そのような対応は必要です。 一方、日本旅館としての伝統スタイルを売りにしていくのであれば、むしろ外国人旅行者には純和風を前面に出すというのもいいのかもしれません。

インターネット予約も3割~5割といわれる現在、旅行代理店だけが顧客獲得のチャンネルでは厳しいかもしれないので、そのような弱みを克服するためにネット販売を強化し、嗜好の多様化という脅威も解消する目的でリピーターの囲い込み策も図る必要があります。

まとめ - SWOTはいつ使う?

以上のように、SWOTはあくまでも現状を見つめる道具であり、この先どう動いていくかは経営戦略やマーケティングの中で決めて行く話ではあると思いますが、漠然としていた状況が整理できたのではないでしょうか。

私はこのSWOT分析をビジネススクール時代に始めて知り、目からウロコ状態でした。仕組みは簡単、でも、奥深いものがあります。確かに、何を強みと考え、何を弱みとするのか?何が脅威で何が機会なのかは多少の主観が入るという批判もあります。強み、弱み、機会、脅威のとらえ方が人によって様々だったりするので、どうとでもこじつけができそうです。

個人的には、これで一から経営戦略を立てて行くためのツールというよりは、今ある戦略を見つめなおしてみたり、自社(自分)ではなく、競合製品や競合他社の成功事例などを自社の既存戦略と比較するために使ってみるといいのではないかと思ってます。

分析ツールといったところで、そんな難しいことをするわけではありませんが、個人的には今のところ、これ以上お手軽な現状分析ツールはなさそうな気がしています。

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