経団連の「国立大学改革に関する考え方」に関する考え方

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文部科学省から6月にだされた通知で、教員養成系学部(いわゆる教育学部)や人文社会科学系学部(いわゆる文系学部)については組織改編や廃止など云々、、、ということがクローズアップされ、全ての国立大学が理系にシフトし、文系学部が意味がないような理解のされ方をしてきました。

 

これがあたかも産業界からの要請であるような報道のされ方もあり、個人的にかなり違和感を感じてきましたが、9月9日に経団連(日本経済団体連合会)から出た「国立大学改革に関する考え方(外部リンク)」を読み、少し安心しました。

 

自分も少なからず会社経営に関することを何年かやってきて、地元の商工会議所や商工会ともお付き合いし、また、現在、地元の大学教員として教育の現場にかかわる機会を頂き、両側の視点から見る限り、「文系は意味がない」的な解釈はあまりにも稚拙だと言わざるをえませんし、企業側がそのような考えでいるとは到底思えなかっただけに、今回の経団連の政策提言は非常に重みがあると感じています。

 

具体的には以下の3点を提言しています。

1.人文社会科学を含む幅広い教育の重要性

2.学長のリーダーシップによる主体的な大学改革の実現

3.産学連携による人材の育成

 

わざわざ1番目に「人文社会科学を含む・・・」とおいているのは、明らかに先の文部科学省の通知に対するものであり、経済界は文系的な知識を軽んじていないということを明言しているのだと思います。

 

国立大学法人の第3期中期目標・中期計画に関し、6月8日付で発出された国立大学法人に対する文部科学大臣通知では、教員養成系学部・大学院や人文社会科学系学部・大学院について「組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう努める」としている。これを巡って、様々な議論が行なわれている。その中で、今回の通知は即戦力を有する人材を求める産業界の意向を受けたものであるとの見方があるが、産業界の求める人材像は、その対極にある。(本文より一部引用)

 

企業組織でもマネジメントの重要性が問われ、コミュニケーション能力が必要だと言われている昨今、このような能力は理系といわれている学問分野にも必要であり、多くの工学系の学部ではMOT(Management of Technology:技術経営)などのコースを設けているところも増えてきました。

 

ただ、その一方で、経済界も現在の大学、特に文科系学部のあり方について完全に満足しているわけではないと思います。

 

理系・文系を問わず、基礎的な体力、公徳心に加え、幅広い教養、課題発見・解決力、外国語によるコミュニケーション能力、自らの考えや意見を論理的に発信する力などは欠くことができないと訴えている。これらを初等中等教育段階でしっかり身につけた上で、大学・大学院では、学生がそれぞれ志す専門分野の知識を修得するとともに、留学をはじめとする様々な体験活動を通じて、文化や社会の多様性を理解することが重要である。(本文より一部引用)

 

基礎力をしっかりと小学校、中学校、高校で身に着けて、それらを踏まえたうえで大学は高等教育および幅広い教養を深める場であるという、当たり前のことを言われています。裏を返せば、初等中等教育のあり方に加えて、大学に入ってリメディアル教育(基礎学力不足の学生に対する、補修教育。再治療教育といわれることもあり、入学した大学生の基礎学力不足を補うための教育を指している。)をしなければ授業が成り立たないケースがある大学の現状に対しての提言とも取れるわけで、教育全体の改革を「誰が悪い・どこが悪い」などという犯人探しをするのではなく、抜本的に進めていかなければならないのだと思います。

 

個人的には、そもそも文科系、理科系と学問分野を分けること自体が時代にそぐわなくなってきていると感じています。手前味噌で恐縮ですが、8月にも早稲田大学の工学系の地域マネジメントゼミの方々と仁愛女子短期大学の私のゼミ生(いわゆる文科系)で学術交流会を実施。いわゆる理系、文系と分けられてしまう別々の分野ですが、やっているのはどちらも「まちづくり」を考えること。交流会はかなり盛り上がりました。

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(写真は学術交流会の様子)

 

前回の記事でも、FD活動(FD=Faculty Development:大学教員の教育力を高める研修活動)について書きましたが、教員の間ではFDに関する理解がまだまだなのも現実です。

 

自分ができることは数少ないですが、まず意識することから第一歩。そして行動すること、、、

 

これは経営も教育も変わらないと思います。

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